FLASH-CAT手法
FLASH-CATモデル
概要
FRI3Dは、適用可能な場合、水平ケーブルトレイ上の火炎伝播(Flame Spread over Horizontal Cable Trays:FLASH-CAT)法を使用して、ケーブルを介した二次燃焼と延焼を評価します。FLASH-CATは、米国国立標準技術研究所(NIST)が実施した管理された火災実験から導かれた経験的手法です。
適用条件
この経験的手法がNIST実験に近い結果を与えるためには、次の条件を満たす必要があります。
- ケーブルトレイが水平で、0.45 m(18 in.)未満の間隔で垂直方向に積層されていること
- ケーブルが開放空間で燃焼すること(すなわち、壁から離れており、天井から十分に低い位置にあること)
- ケーブルが、下方の着火源を除き、高温源にさらされていないこと
- トレイ間を隔てるバリアがなく、トレイの上面と下面が開放されていること
- ケーブルが塗料(コーティング)、装甲シールド、断熱ブ ランケット等で一切保護されていないこと
- 最下段のトレイの下に火源が存在すること
- 各トレイに少なくとも1列分のケーブル、すなわちNRC制限値のおよそ25%が収容されていること
FRI3Dのモデル作成者は、これらの制限に従って二次可燃物をモデル化することが求められます。たとえば、1つのトレイの下に複数の火源がある場合、二次燃焼シミュレーションの結果は正確ではなくなり、また、ケーブルトレイ(レースウェイ)が壁や天井に比較的近い場合も現実的な結果は得られません。
延焼と熱放出
火災は、NIST実験で観察された特徴的なV字型の燃焼パターンでトレイ積層内を延焼します。火災はまず火源の直上のトレイに着火し、その上の各トレイは、火災がトレイに沿って上方および外側へ伝播するにつれて、順次より広い範囲にわたって着火します。

FLASH-CAT法は、ケーブルを複数の空間セグメントに分割します。火災があるセグメントまで伝播すると、そのケーブルセグメントが燃焼します。燃焼時、そのセグメントの単位面積あたり熱放出率(HRRPUA)は、火災の成長と減衰のダイナミクスを反映して、下図に示す時間プロファイルに従います。HRRは から増加を始め、 の6分の1後にピークHRRPUAに達し、 まで一定に保たれた後、線形にゼロまで減少します。
FLASH-CAT Time History

各レースウェイグリッドにおける局所HRRPUAの時間履歴。
各レースウェイグリッドのHRRPUAプロファイルが計算された後、すべてのトレイについて局所HRRPUAプロファイルを合計することにより、燃焼中のトレイのHRRが計算されます。
ここで、 は燃焼中のトレイのHRR、 はトレイ の幅、 は局所HRRPUA、 はトレイ 上の点 のケーブルが着火する時刻(下記参照)、t は離散的な観測時刻です。各トレイにはそれぞれ自身の幅が用いられます。連結されたトレイ群の各トレイのHRRPUAおよび可燃物質量には、その中で最も可燃物量の多いトレイの値を用います(保守側の選択)。
ケーブルが着火する時刻
トレイからトレイへ(積層方向)
- 火源直上の最下段トレイは、火源の火炎がその下面に到達した時点で着火します。火炎が到達しない場合は、受熱がケーブルの着火しきい値を超えた時点で着火します。しきい値は、熱可塑性ケーブルで 205 °C または 6 kW/m²、熱硬化性ケーブルで 330 °C または 11 kW/m² です。
- その上の各段は、直下の段の着火から 4 分、3 分、2 分、その後は 1 分後に着火します。これはFLASH-CAT(NUREG/CR-7010)のタイミングシーケンスです。
- 初期燃焼長さ。 最下段トレイでは、NUREG/CR-7010の規定どおり、火源火災の幅に等しい長さ が、火源の直上を中心として即座に着火します。FRI3Dでは、トレイが延びる方向の火源の寸法を用います。寸法を持たない火源の場合は、面積が最大のときの火災の直径を用います。CFASTとFDSは同じ長さを用います。上の各段は、より長い から燃え始めます( はトレイの段間隔)。これによりV字形の燃焼パターンが生じます。
トレイに沿って
初期燃焼長さの両端から、火災はケーブルに沿って両方向へ一定の速度 (熱可塑性ケーブルで 3.2 m/h、熱硬化性ケーブルで 1.1 m/h)で延焼します。火源からトレイに沿って測った距離 にあるケーブルの着火時刻は次のとおりです。
連結されたトレイへ
FRI3Dは同じ高さで接するレースウェイを連結しており、火災はその連結を通じて延焼を続けます。
- 火災はトレイ同士が接する箇所で次のトレイへ移ります。2本のトレイが重なっている場合は、重なり部分のうち火源に最も近い端で移るため、火炎前線が通過する際に2本は並んで燃焼します。
- 次のトレイでは、接続点から両方向へ延焼します。
- 各トレイの各点は、トレイに沿った最短経路で火炎前線が最初に到達した時点で着火します。経路が分岐またはループする場合は、近い方の経路が採用されます。
したがって、火源の直上にあるトレイは火炎が到達してから数秒以内に燃焼しますが、そこから経路に沿って 2.5 m 先で連結されたトレイは、火炎前線が到達するまで燃え始めません(熱可塑性ケーブルで約40分後)。
FLASH-CAT自体は直線状のトレイの積層1組を対象としており、火災は「トレイの端に達するまで」延焼するとしています(NUREG/CR-7010)。連結されたトレイへの延焼の継続はFRI3Dによる手法の拡張であり、FLASH-CATは水平方向の延焼を過小評価するよりも過大評価する傾向があるという同報告書の所見と整合しています。
着火したトレイは、その着火時刻に、収納するすべてのケーブルとともに故障となります。レースウェイ/トレイの故障を参照してください。
燃焼中のトレイをシミュレーションに取り込む方法
- CFAST: 最初のCFAST実行(火源のみ)の後、FRI3Dはトレイの HRR と着火時刻を求め、燃焼中のトレイを独立した火災として追加してCFASTを再実行します。火災はトレイの積層1組につき1つで、火源の位置に配置され、最下段トレイの着火時に開始します。そのHRRと燃焼面積は上記の合計から得られます。再実行のたびにさらに別のレースウェイが着火し得るため、このループは追加の二次可燃物が見つからなくなるまで継続されます。CFASTはトレイの発熱を火源上方の単一のプルームとして放出するため、火源から離れる方向へトレイに沿って広がる火炎は高温ガス層を上昇させますが、そのトレイ近傍のターゲットを直接加熱することはありません。
- FDS: 燃焼中のトレイは、トレイ自体の上のバーナーとしてFDS入力に書き込まれ、それぞれがFLASH-CATのタイミングで着火するため、シミュレーション中に火災がトレイに沿って移動します。
FRI3DでのFLASH-CATの使用方法
FLASH-CAT手法を使用するには、下のスクリーンショットに示すように、火源の上方の十分に近い距離にレースウェイを配置し、二次可燃物となるケーブルをレースウェイ内に追加します。
なお、FLASH-CAT手法における水平方向の延焼速度は比較的遅く(毎時1〜3メートル程度)、ケーブルレースウェイは一般に長いため、レースウェイ全長にわたる二次火災の完全なHRRプロファイルを推定するには数時間のシミュレーション時間が必要になる場合があります。これを踏まえ、解析対象のレースウェイ長を制限することを検討してくださ い。

次のステップ
- CFASTシミュレーションおよびFDS出力 — 合成されたHRRを入力として、ケーブルおよび機器の故障を左右する温度を算出する火災シミュレーション。
- ヒートソークおよびTHIEF — シミュレーションで得られた熱曝露に対して適用されるケーブル故障計算。