FDS検証(NUREG 1934)
FDS検証(NUREG 1934)
FRI3Dは、3Dプラントモデルから直接、完全なFDS入力デッキを生成します — 区画境界、 障害物、機械換気、漏気、火源、および計測デバイスが含まれます。この生成パイプラインを エンドツーエンドで検証するため、FRI3Dの出力を米国NRC NUREG-1934(EPRI 1023259) 付録A(Appendix A)— 主制御室(MCR) リファレ ンスシナリオに対してベンチマークしています。 これはNRCおよびEPRIが使用する標準的な火災モデルV&Vケースの一つです。
リファレンスケース
MCRケースは、名目上密閉された24.6 m × 16.2 m × 5.2 mの制御室における 制御盤キャビネット火災をモデル化しています。
- 火災: 電気キャビネット火災。t²成長により720 s時点で702 kWのピークに到達 (NUREG/CR-6850のキャビネット火災プロファイル)。燃料化学組成はXPE/Neoprene、 CO収率は0.1です。
- 換気: 給気ディフューザ6基および還気レジスタ2基。2つのシナリオを実行します — 排煙パージ(通常の5倍流量、約25 ACH / 13.4 m³/s)と パージなし(換気停止)です。
- 漏気: 外気への単一の0.0117 m²の漏気経路(ドア隙間)。
- シミュレーション: FDS 6、1200 s。
手法
公開されているNRCのFDS入力デッキをベースラインとして実行します(後述する1件の修正を 適用)。同じ制御室のFRI3DモデルをFRI3D UIで構築し(境界壁を含む区画形状、キャビネット、 機械換気、漏気、NUREG火災ランプ)、FDSデッキはFRI3Dが生成します。シナリオごとの 手動調整 — ファン状態(停止/パージ流量)と計算メッシュを部屋の範囲に合わせる調整 (いずれもNRCデッキの構造を踏襲したもの)— は、モデル駆動の動作としてジェネレータに 統合を進めています。両方のデッキを同一のFDSビルド(6.7.9)・同一マシンで実行し、 両デッキが出力する物理量で比較します。FRI3Dデッキの比較デバイスはNRCデッキの プローブ位置に配置 しています。
| 物理量 | FRI3Dデッキ出力 | NRCデッキ出力 |
|---|---|---|
| 熱放出率 | HRR | HRR |
| 高温ガス層温度 | NRC_HGL_TEMP | VAL_HGL_TEMP |
| 高温ガス層高さ | NRC_HGL_HEIGHT | VAL_HGL_HEIGHT |
| 区画圧力 | ZONE 圧力 | ZONE 圧力 |
構造上の補足: FRI3Dが区画境界ラティスから生成する壁障害物は、FDSの自動圧力ゾーン検出に より完全に隔離された空間を形成すると判定されます。これ自体が意味のある検証結果です — FRI3Dが生成する壁ラティスはFDS格子上で気密であり、壁の接合部やコーナーに意図しない 隙間がないことを示しています。FRI3Dが生成する壁・天井材料(16 mm石膏ボード、0.5 m コンクリート)はNRCデッキと正確に一致します。
公開リファレンスデッキに対する修正
パージなしシナリオの検証中に、公開されているNRCのFDS入力デッキに書式上の欠陥が
見つかりました。これらのデッキはファンスケジュールを、基準VOLUME_FLOWに時間ランプ
(RAMP_V='PURGE')を乗じる形で記述していますが、両者の間にインライン注記を
挟んでいます。
&SURF ID = 'SUPPLY'
VOLUME_FLOW = -2.233 / negative if entering zone
RAMP_V = 'PURGE' /
Fortranのネームリスト構文では、/はレコードの終端であり、コメント記号では
ありません。そのためRAMP_Vの行は&SURFレコードの外側にな り、FDSは警告なしに
これを無視します(FDS 6.7.9で最小構成の単一ベントテストデッキにより検証済み:
同一のパラメータを1行に書けばランプは有効になり、NRCのレイアウトでは一定の
全流量が再現され、警告は出力されません)。公開されている2つのシナリオへの影響は
次のとおりです。
- パージなし(ランプF = 0、ファン停止を意図): 実際にはファンが基準流量 13.4 m³/s(約25 ACH)でシミュレーション全体にわたり稼働していました。
- 排煙パージ(基準 = 通常流量、10 sで5倍ランプ): 5倍ランプが無効となり、 パージ流量ではなく通常換気(約5 ACH、2.68 m³/s)で実行されていました。
したがって、以下のパージなし比較に用いるベースラインは、ファンを実際に停止させた
NRCデッキ(VOLUME_FLOW = 0、ランプ削除。その他は公開デッキとバイト単位で同一)
です。FRI3Dが生成するデッキは影響を受けません — FRI3Dは各ファンサーフェスを、
モデルから取得した一定体積流量の1行レコードとして出力します。
結果(パージなしシナリオ)
FRI3D生成デッキと修正済みNRCベースライン(ファン停止、0.0117 m²の漏気経路のみを 通じて通気する密閉室)の、1200 s全区間にわたる時刻一致比較:
| t (s) | HRR (kW) FRI3D / NRC | HGL温度 (°C) FRI3D / NRC | HGL高さ (m) FRI3D / NRC | 圧力 (Pa) FRI3D / NRC |
|---|---|---|---|---|
| 120 | 18.9 / 17.3 | 21.1 / 21.1 | 4.98 / 4.96 | 3 / 2 |
| 240 | 74.6 / 72.9 | 24.9 / 24.7 | 4.18 / 4.23 | 42 / 34 |
| 360 | 169.2 / 168.6 | 28.8 / 29.0 | 3.26 / 3.37 | 151 / 135 |
| 480 | 303.5 / 302.8 | 35.2 / 34.8 | 2.48 / 2.65 | 361 / 311 |
| 600 | 474.0 / 474.6 | 44.4 / 44.0 | 2.06 / 2.27 | 638 / 560 |
| 720 | 687.9 / 686.6 | 56.6 / 55.7 | 1.82 / 1.95 | 993 / 875 |
| 840 | 701.9 / 702.2 | 65.7 / 63.2 | 1.52 / 1.63 | 547 / 430 |
| 960 | 704.3 / 702.6 | 70.6 / 68.4 | 1.37 / 1.50 | 190 / 150 |
| 1080 | 703.0 / 702.2 | 73.6 / 70.8 | 1.24 / 1.39 | 87 / 68 |
| 1200 | 702.8 / 701.7 | 76.5 / 73.0 | 1.20 / 1.37 | 63 / 41 |
FRI3D生成デッキ vs 修正済みNRC FDS6ベースライン — パージなし

熱放出率 — 実行全体で正確に一致: 成長ランプ、720 sでの702 kWピーク、および 持続燃焼プラトー。FDSが計算するHRR(燃焼モデルによる体積積分熱放出であり、入力曲線の エコーではありません)は出力精度で一致し、いずれの密閉室も酸素制限には至りません。
高温ガス層 — 温度は全過渡期間にわたり3.5 °C以内(5%以下)で一致し(t = 1200 sで 76.5 vs 73.0 °C)、層高さは約0.2 m以内で、同じスケジュールで降下します。FRI3D側の わずかな高温バイアスは、文書化されたデッキ差異と整合しています: NRCデッキは1面の 壁サーフェスを未割り当てのまま残しており(無制限に熱を吸収する等温デフォルト境界)、 床にはカーペットを敷いているため、いずれもガスからわずかに多くのエネルギーを 奪います。
区画圧力 — 両モデルとも同じ漏気経路を通じて同じ軌跡で加圧され、同一時刻に ピークに達し(t = 735 s、1.01 vs 0.89 kPa)、プラトーの熱を壁が吸収するにつれて 共に減圧します。壁への熱損失割合は、両モデルで一致する曲線に沿ってHRRの約50%から 約95%まで上昇します。
結果(排煙パージシナリオ)
FRI3D生成デッキと修正済みNRCベースライン(ファンは真にパージ流量で稼働: 給気6基が 各2.233 m³/s、還気2基が各6.7 m³/s — 計13.4 m³/s ≈ 25 ACH — に加えて0.0117 m²の 漏気経路)の、1200 s全区間にわたる時刻一致比較。圧力は両デッキともFDSが計算する 室の圧力ゾーン値です:
| t (s) | HRR (kW) FRI3D / NRC | HGL温度 (°C) FRI3D / NRC | HGL高さ (m) FRI3D / NRC | 圧力 (Pa) FRI3D / NRC |
|---|---|---|---|---|
| 120 | 17.4 / 17.3 | 20.1 / 20.1 | 5.20 / 5.20 | 5 / 4 |
| 240 | 73.4 / 73.3 | 21.2 / 20.8 | 4.50 / 5.17 | 58 / 52 |
| 360 | 168.5 / 168.4 | 22.9 / 22.2 | 2.35 / 3.50 | 248 / 231 |
| 480 | 302.3 / 302.4 | 26.6 / 24.8 | 2.90 / 3.26 | 691 / 656 |
| 600 | 474.8 / 475.3 | 30.6 / 31.2 | 2.87 / 3.77 | 1529 / 1447 |
| 720 | 686.5 / 688.9 | 38.1 / 40.7 | 3.22 / 3.90 | 2995 / 2769 |
| 840 | 701.3 / 702.7 | 41.2 / 42.7 | 3.05 / 4.00 | 3959 / 3653 |
| 960 | 702.3 / 700.5 | 42.3 / 40.3 | 3.17 / 3.80 | 4357 / 4003 |
| 1080 | 703.6 / 701.5 | 41.8 / 42.4 | 2.81 / 3.75 | 4607 / 4192 |
| 1200 | 702.0 / 704.0 | 42.7 / 43.8 | 2.86 / 3.90 | 4777 / 4344 |
FRI3D生成デッキ vs 修正済みNRC FDS6ベースライン — 排煙パージ

熱放出率 — パージなしの場合と同様、実行全体で正確に一致(最大差4.3 kW、0.6%)。
高温ガス層 — 702 kWプラトー区間(t = 735–1200、32サンプル)で、層温度の平均は 41.8 ± 1.0 °C(FRI3D)vs 41.6 ± 1.4 °C(NRC) — 平均差0.1 °Cで、各モデル自身の 変動幅より一桁小さい値です。パージは両モデルとも層をパージなしの場合より約30 °C 低く保っており、同一の換気有効性を示しています。天井ジェット熱電対もプローブの ばらつきの範囲内で一致します(59.7 ± 1.6 vs 61.4 ± 2.1 °C)。
高温ガス層高さ — 両モデル間の唯一の系統的差異: FRI3Dデッキは煙界面を 3.05 ± 0.15 mに、NRCデッキは3.79 ± 0.10 mに保持し、プラトー全体で安定した約0.7 mの オフセットがあります。いずれの界面も静止しており、1.8 mのオペレータ面より十分 上方にあります(オペレータレベルの環境は両モデルとも全区間で許容範囲内)。この オフセットは家具の表現の違い — NRCデッキの長い連続ベンチとFRI3Dの個別キャビネットでは 鉛直混合プロファイルの形が異なり 、2ゾーン還元法はこれに敏感です — と整合しており、 FRI3D側が深い層を予測する保守的な方向の差です。
区画圧力 — 両室とも同一の漏気経路を通じて同じ軌跡で加圧され、熱的定常状態への 到達(t ≈ 800 s までに壁損失が両モデルでHRRの約100%に到達)とともに共に頭打ちとなり、 最終値は4.78 vs 4.34 kPa(+10%)です。パージケースの圧力が両モデルともパージなしの ピークを上回るのは同一の物理的理由によります: ファンは体積流量指定のため、給気は 低温で密度の高い空気を押し込み、還気は同じ体積流量で高温の軽い空気を排出する — 室温とともに増大する正味の質量獲得であり、両デッキで同一です。
ステータス
- パージなし: 完了 — 上記に1200 s全区間の比較を掲載。
- 排煙パージ: 完了 — 上記に1200 s全区間の比較を掲載。
参考文献
- NUREG-1934 / EPRI 1023259, Nuclear Power Plant Fire Modeling Analysis Guidelines, Appendix A: Main Control Room.